ものがたり
勇気のかけら
新たな仲間、そして突然の別れ。また一人になってしまったけど…今の僕は、昔の僕とは違った。 [◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7 ◆8 ◆9 ◆10 ◆11 ◆12 ◆13 ◆14]12
来た道……道と言っていいのか分からないけど、このゴツゴツした山道を戦車で進んでいく。
本当はスピードをもっと上げたい! しかし、この山道。そうするほど戦車の揺れが激しくなってしまう。
時折、僕が座っている操縦席側にいるニンテンが「うーん」と唸っているのが聞こえるんだ。
怪我人を運んでいるんだ。急ぎたい気持ちを抑えて、やっぱりここは慎重にしないと……!
来た時よりスピードは遅くなってしまっているけど、それでも敵を蹴散らすのには十分な威力があるようだ。
勢いよく戦車に向かってくるけど、激しくぶつかり無残に壊れるロボット。まさに「当たって砕けろ!」と思っているのかもしれない。
それを見てか、ロボット以外の不思議な生物たちは、さすがに寄ってこない。むしろ怯えている様子に見える。
でもその派手にぶつかるロボット達の様子を見てると、ちょっと気になる事が出てきた。
(せっかく修理した戦車だけど……結構傷とか付いちゃったかもなぁ。もしかしたらまた壊れた部分があるかも……)
そう思うとちょっと残念だ。おじいさんにも悪いし、自分も修理を手伝ったから……でも一応借り物なんだ。
(3人を運び終わったら、戦車をおじいさんに返そう。)
僕はそう思った。元々皆に合流したら返す予定だったし、バレンタインの町でおじいさんに会った時のことを思い出せば、
怒っていると思ったら見事な狼狽っぷり、必要な部品を揃えるまでの自力の修理。本当に大事なんだろう。
そういえば、命の次に大事とか言っていたっけ……僕にとっては、相対性理論の本を取り上げられるってところかな?
でも。またあの巨大なロボットに襲われたり、危険な目にあったら? もちろんその心配は、ある。
PSIが使えるニンテンとアナ。腕っ節の強いテディ。この3人がこんな目にあっているんだ。
僕ももしそうなったら……正直、怖い。本当に怖い。恐ろしい。僕だったら怪我どころじゃすまないかもしれない。
だからこの戦車があれば心強いんだろうけど。また壊れるようなことになったら、おじいさん、今度は気絶しちゃうかもな。
あの巨大なロボットの特徴ある轟音はさすがに覚えた。近づいてくればすぐに分かると思う。
だから今度は僕も一緒に山に登ろう! 皆に教えて、ロボットと対面する前にどこかに非難すれば最悪な事態を逃れるはず。
戦車をおじいさんに返して、今度は僕も共に山へ行く。そう決心した。
「あ……」
まただ。また僕は冒険に出る前の僕では考えられない決心をしている。
ちょっと前の僕は、戦車を返すどころか、あのロボットが怖くって山に登ることをためらうはずだ。
いや、そもそもこうやって3人の元へ来ることすらなかったかも……!
山の麓の小屋のおじさんに勇気があるって言われた時は驚いて鼓動が早くなったけど、今度は逆に嬉しくなった。
勇気がある事なのか僕にはまだはっきり分からないけど、自分一人で行動して頑張っている。それが改めて実感できた。
きっとこのホーリーローリーマウンテンで僕達の旅は終わる。結果がハッピーエンドでもバットエンドでも、
僕は旅に引っ張り出したニンテン、バレンタインの残るように言ったテディに感謝しなきゃいけないな。
いや、僕達はこんなに頑張ったんだ。絶対にハッピーエンドになる。そうさせなきゃいけない。
そうなる様にあともう少し。もう少し頑張らないといけないんだ……!
そしてやっと。険しい山道を乗り越え、僕はおじいさん達が待つ小屋に到着し、傷ついた3人を小屋の中へと運んだ。
「男の子と女の子は気絶しているけど、怪我は軽くてよかった。うーん、あとはテディだな……」
小屋のおじさんがテキパキと3人の手当てをしてくれた。おじさんは登山者のために薬を小屋に常備していて、
簡単ながらも応急処置が出来る人みたいだ。ちなみに山に居たヒーラーさんも登山者のためにあそこに居るらしい。
「そ、そんなに酷いんですか?」
僕はちょっと心配になってきた。そういえば、2人をかばっていたような状態だったもんな……
「ここにある薬や道具じゃ無理そうだ。町の方に応援は出しておいたから、とりあえずこのまま様子を見るしかないな。」
おじさんは少し悔しそうにそう言った。きっとヒーラーさんと同じような心境なんだろう。
とにかく、ひどい怪我というのは分かるけど、どうやら僕の予想以上のようだった。
「なんじゃ……なんかわしの想像以上じゃなぁ……」
今まで黙っていたおじいさんが口を開いた。実は戦車が結構傷が付いてしまってて、それを見てから絶句していたんだ。
今が地球の危機で、どういう事が起こっているって言うのはおじいさんに一通り話していたけれど、
敵がどんな恐ろしい奴らなのかは実際には目にした事が無いみたいだ。
まぁ、正確には飛び込んでくる敵をそのまま弾き飛ばしていた僕も悪いと思うんだけどね。
戦車の事もショックだったみたいだけど、3人の様子も見てさらに驚いてしまったらしい。
「ご、ごめんなさい、おじいさん。大切な戦車をまたあんな風にしてしまって……」
また怒って怒鳴ったら、オロオロと慌てるんじゃないかと思ったけど、
「いや、いいんじゃ。前のぶっ壊れ方よりかはマシだ。それにまた修理すればいい。」
と、意外に落ち着いた口調でそう言った。よ、よかった……おじいさんもどこか、吹っ切れた所もあるのかもしれない。