ものがたり
勇気のかけら
新たな仲間、そして突然の別れ。また一人になってしまったけど…今の僕は、昔の僕とは違った。 [◆1 ◆2 ◆3 ◆4 ◆5 ◆6 ◆7 ◆8 ◆9 ◆10 ◆11 ◆12 ◆13 ◆14]4
―バタン。
ドアの閉まる音が聞こえると、僕は体中の力がふっと抜けた気がした。
僕らのやり取りをずっと黙って聞いていたニンテンが、やっと口を開いた。
「僕はテディの言っていることが分かる気がするな。ロイド。君はここに残りなよ。」
「き、君までそう言うのか!? テディが言ったように、やっぱり僕は……足手まといになるのか?」
テディにそう言われてから、僕は泣きそうになっていた。すでに目には涙が浮かんでいたのかもしれない。
しかしニンテンは、あの愛嬌のある顔でニッと笑い、こう言った。
「そうじゃないさ。ホーリーローリーマウンテンに行って、僕らが敵に倒されてしまうかもしれない。
その時に助けて欲しい。対処して欲しい。そういうことじゃないのかな?いわば補欠みたいなもんかな。
……あ、補欠だなんて言ってごめんね。でも本当にそういう意味だと思うよ。」
「そうね……ロイド、あなたが残ることに意味があるのだと思うの。」
アナもニンテンと同じく続く。
「あなたは聡明だから、確実な案を出して私達を助けてくれると思うの。例えば私が残っても、
何もすることが出来ずに、ただ祈っていることしか出来ないと思う……ニンテンが残っても、
彼はこの闘いに、重要な意味を持っているわけだし、」
「この通り野球馬鹿だから、なーんにも出来ないだろうしね!」
ニンテンは口を挟みそう言ってヘヘへ、と笑った。アナも釣られてくすっと笑う。
二人の優しさが伝わってきた。二人に言われて、テディの言いたかったことがやっと分かった。
「二人とも……ありがとう。分かった。残ることにする。でもちゃんと対処する自信がないよ。」
「大丈夫さ! あ、そうだ。これを……」
ニンテンはそう言うと、なにやらポケットをごそごそと探りはじめ、財布を出した。
そして中からキャッシュカードを取り出した。地球のデザインが描かれた特徴的なカードだ。
いつもニンテンのパパが振り込んでくれるので、冒険はそのお金で成り立っているんだ。
「はい。しばらくは君が持っていてくれ。」
「え!? 君のじゃないか。それに君のパパのお金なんだし……僕が使っていいの?」
「君なら使っていいよ! ホーリーローリーマウンテンになんか店はないだろうしさ。
それに、ここのホテルの料金だってかかるし。ぜひ役立ててくれよ。」
僕はニンテンからカードを受け取った。冒険を支えているカード。僕は誓った。
(これは大切に使わなければならない……!)
「それじゃ行こうか、アナ。テディが待っているだろうし。」
「ええ、行きましょう。」
二人は立ち上がり、ドアへと向かった。その姿に、とてつもない寂しさが襲ってきた。
久しぶりに一人になることが、怖かったのかもしれない。
「じゃぁ……ロイド。何かあったときは頼むよ! 信じているからね!」
「私達も頑張るから、ロイドも頑張ってね。 私も信じているわ。」
二人の言葉に、これから行く先は本当に大変なところなんだと実感した。
―これで会うのが最後じゃない! 最後じゃないよね!!
思わずそう思ってしまった。けど、それは胸にとどめて、
「が、頑張ってきてね!!」
僕はそう言って、二人を送り出した。
シンと静まり返った部屋。僕は脱力し、ベットに腰掛けた。
「……はぁ。」
自然とため息が出てしまった。そして、先ほどまでの数十分の時間がまるで夢のように感じた。
テディはこの戦いに僕は必要ない、足手まといといっていたけど、ニンテンとアナはそうではなく、
何かあったときの手助けをして欲しいからと言ってくれた。
テディはまるで悪口のように怒鳴りつけていたが、しばらくバレンタインに残れと伝えたかったようだ。
怒りと敗北感、そして一人になった寂しさが渦巻いていたけど、そう考えると逆に嬉しくなってきた。
(こんな僕でも信用されているのかな。それならそうと言ってくれればよかったのにな。
さぁ! こうしちゃいれられない。たとえここに残るとはいえ、のんびりしている暇はないんだ!)
僕はひとまず、何か行動を起こすことに決めた。とは言っても、具体的に何をすればいいんだろう?
「ボムとか何か武器を集めていた方がいいかな? でも役に立たなかったら困るしなぁ……
それか3人が怪我したら大変だし……薬とか救急道具を集めるべきか?」
いざ考えると、居残り組みも大変だなと思った。これからの展開がとても予測がつかないのだ。
「とにかく……外に出てみようかな。何かいい考えも浮かぶかもしれない。」
僕は静かな部屋をあとにした。
ホテル前の大通りをとぼとぼと歩く。歩いているうちに考えが浮かぶと思ったけど、なかなか浮かばない。
500mの距離もあっという間に歩ききってしまい、ライブハウスの近くに来た時だった。
変な格好の人がウロウロしている。よく見るとパイロット姿の老人のようだった。
(パイロット姿の老人……?)
何か頭に引っかかることがあった。確か前にも会った気がする……
(アドベント砂漠で遊覧飛行に飛行機に乗せてもらって、戦車を貸してくれたおじいさんだ!)
と思い出す前に、おじいさん本人が僕に気づき、こちらに歩きながら叫んできた。
「お前さんはあの時の三人組のボウズじゃないか!!」
「は、は、は……はい。」
「よくも戦車を壊したな! わしの、わしの大事な戦車をぉ……!」
そう叫んでから壊れてしまった戦車を思い出したのか、オロオロし始めた。