君のチカラで!

ものがたり

To a child important thing

将来の夢…ずっと思い続けてきた強い意思が、ふと弱気になってしまうことだってある。 [◆1◆2◆3◆4◆5

4

―僕らは温泉の近くにいたんだけど、僕はどせいさんショップへ駆けていった。辺りはもう真っ暗。星が綺麗だ。
中に入ったら、「できるます。うったりかったりどせいさんです。」と、お馴染みのセリフを言われたけど、僕は断った。
僕が用があるのはパパ…まぁ、電話だけどね。しかもここでは、電話は変な所にある。
はしごみたいなのを登らないとかけられない。なかなか面倒だ。
とにかく僕はいつものようにパパに電話をかける。仕事場なのかそれとも家なのか。パパは必ず出てくれる。

「もしもし?」
「あ、パパ?僕だよ、ネス。」
「おー!ネスか。えーと、次のレベルまで…」
「あ、あ、パパ、今はそれはいいよ。今は…普通に話がしたくって。」
「はは、そうかそうか。そうだなーお前が冒険に出てからまともに話をしてないな。
…そうだな、たまにはいろいろ話そうじゃないか。」
「うん…。パパ、僕ら明日、明日ついに最後の敵の所へ行く予定なんだ。」
「…」

いきなり重い話を持ってきてしまったようだ。パパはいきなり沈黙してしまった。

「そうなのか…ママには連絡したのか?」
「うん。今日の昼にちょっとオネットに行ったからね。その時に。」
「お前の冒険もそこまできたのか~…パパは冒険の記録をつけるのと、お金を振り込むことしか出来なかったな。
まったく、地球を救う子の父親だというのに、頼りにならなかったな。」
「そんなことないよ!記録をつけてもらってすっごく助かったし、お金もあんなにたくさん…!」

―これは嘘じゃない。ママ、パパ、トレーシー、ポーラ、ジェフ、プー…
みんなみんな!みんな協力してくれた。この頼りない僕のために。

「はは、それならいいよ。もう、パパからはただ頑張れとしか言えない。
とにかく勝って、すべてを救ってくれ。そしてヒーローになってくれよ!
この冒険が終われば、パパは“ヒーローのパパ”になれるんだからな。」

そう言えば冒険をはじめる時にも電話でそんなこと言っていたような。

「うん、そうだね!…確かに冒険が終われば、僕はヒーローになれるかもしれないけど。でも本当のヒーローじゃないよ。」
「え?そんな、地球を救うんだからヒーローに決まってるじゃないか。」
「ううん…そうじゃないよ。ここまでこれたのはいろいろな人の協力があったからだし…
それに…本当にヒーローになるのは、僕の夢を叶えてからさ。」
「協力があったから…は分かるが、夢を叶えてからだって?」
「うん。“野球選手になる”夢をね。あ、正確には“大リーガーになる”だけど。
小さい頃から野球選手になるって言ってたでしょ、僕。パパが叶えられなかった夢をかなえるためにも。」
「そう言えばパパのこと、おまえに言ったんだっけ。」
「うん。冒険に出る前にあった試合の時に思い出してね。僕がこの冒険に出たのは運命とかそう言うのもあるけど…
ここで僕が地球を救えなかったら、せっかくの夢が台無しになるよ。ここで野球選手になる夢をあきらめたくないよ。
僕やみんなの夢、未来を“ギーグ”なんて奴に渡したくないさ!!!」

―僕はぴしゃりと言いつけた。パパに…もとい、電話にだけどね。
でも、これは本音みたいなもんだ。いや、本音かも。事実であるのは間違いない。しばらく静かだったパパだったけど、

「そうか…あぁ、そうだよな!地球を救う…つまり、未来を救うこと。
未来をやすやす他人に渡してもなぁ!渡す奴なんかぁ…そりゃ馬鹿だ、馬鹿。大馬鹿者だ。」
「うん!そうだよ!」
「だったらネスはそれを防ごうとする天才なわけだ。さっすが我が子よ!
さっきも言ったが、これしか言えない。ヒーローを目指すためにも、この冒険に終止符を打ってくれ!
ネス!頑張れ!!……パパ大佐からは以上である!」
「ええっ?…OK!イエッサー!!」

―最後はパパとふざけた。僕は大きく叫び、そしてちょっと名残惜しく受話器を置いた。
あはは、どせいさん達が僕の声に驚いている。ごめんね。 よかった。今日はいつもよりじっくりパパと話すことができた。
もしかしたら…もう、ああやって話すことが…出来ないかもしれないから…
でも。そんなことは絶対にさせない。ギーグとか言う奴になんか渡させない。地球を。夢と言う物が乗った未来を。
そのために僕…僕達は旅を続けてきた。絶対に、絶対に渡さない。そして、絶対に叶えてみせる。

―僕らの夢―

「ふぅ…」

―息子は元気に叫んで電話を切った。ママに似てるからな…
どうやら息子ネスは自分の居ない間に立派に成長しているようだ。

「そろそろ俺も“家に居ないパパ”に終止符を打つべきなのかもな。これからネスの成長っぷりを見たい。
そろそろあいつの誕生日か…たまには豪華なケーキを買ってやらないとな。
そして、新しいピカピカのバットを買ってやろう。今バットは武器として使っているようだし…
帰ってきたらお隣さん、うるさいかな…?ま、そんなことはどうにでもなるか。」

―ネス、そんな立派になってパパは嬉しいよ。また目から汗を流しそうだ…


―外はさっきよりも寒くなっていた。僕はホテル(って言うのかな?)に行った。既にポーラがきていた。

「あ、ネス。もう!どこ行っていたの??」
「あ、さっきはごめんね。ちょっとパパと話したいことがあったからさ。」
「そうだったの…ううん、別に大丈夫よ。私もさっきまでここで家に電話していたから。」

ポーラ…目が赤い。もしかしたらママとパパに僕のようにじっくり話してきたのかもしれない。
ポーラのパパのことだ。明日最後の敵の場所へ行くとなると、そうとう話こんだに違いない。
そこへ、ジェフとプーもやってきた。

「博士とアップルキッドが今日は休めってしつこく言われてね。僕もスペーストンネル作りしたいのに。」
「もう少し瞑想をしてこようと思ったのだが、夜だから少し冷える。ここで体調を崩したら終わりだからな。」

―二人が同時に、それに言い訳のように話すから僕とポーラは笑い出してしまった。
きょとんとして、顔を見合わせる二人。二人もプッと吐き出して、顔を歪めてしまった。

「あっはははは!もう、今日は休もう。オネットでの事があったから疲れちゃったよ。」
「そうね。もうこんな時間だし、私も疲れちゃった。それに、明日は重要な日ですもの。」
「でも、まだ寝るのには早くないか??僕はちっとも眠くないよ。」
「お前はやっぱり夜更かしする気なのか?休息が一番大事だぞ。」

まぁ、確かにそうだ。僕とポーラは先に休んでいたけど、眠れなかったし。
遠足の前に日にワクワクして眠れないのと同じかもしれない。僕だって試合の前の日はなかなか寝つけない。
ギーグのところに行く事は全然ワクワクしないけど。そこで僕はあることを思いついた。

「ねぇ。みんな寝むい?」
「うーん、やっぱりまだ眠れそうにないわ。」
「まだまだ余裕かな?」
「明日のことを考えると…まだ。」
「やっぱりね…この機会だ。寝れるまで今はじっくり話そう。
「いいわよ。」「うん、いいよ。」「別に構わないが。」

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