君のチカラで!

ものがたり

ぼくらのひみつきち

僕らの秘密基地へようこそ!

―ジリリリリリン!!

終礼のベルが学校中に響き渡った。
その瞬間に、各教室から生徒がどばっといっせいに出てきた。
一目散にロッカーに向かい、自分達のリュックやバックに勉強道具を詰め込む。
そして、友達と駄弁りながらわらわらと校舎を出て行く。
僕―ネスも、そんな生徒達にもみくちゃにされながら、僕自身もロッカーに向かった。
―今日は皆と野球するから、これからすぐに家に帰ってリュックを置いてこなくっちゃ。
あ~でもママがおやつ用意していたらどうしよう。その時は食べながらグラウンドに行けばいいか。
僕はこのあとの予定をモヤモヤと思い浮かべながら、リュックに道具を詰め込み背負った。
その時、後ろから声がかかった。
「ネス! ネス、ちょっと待ってくれ。」
声で誰だか分かる。このあと一緒に野球をする仲間、ケビンだ。僕は振り返り、
「どうしたの?このあと皆で野球するんだろ。早く家に帰って荷物置いてこなきゃ。」
すると彼はニヤニヤ笑って、
「まぁ、待てよ。その前にネスに見せたいものがあるんだ。寄っていこうぜ。」
「えー? どこだよ。」
「いーいから! いいから! 来いって! お前も気に入るはずだから。」
そういうと彼は、僕の手をとって無理やり引っ張っていった。
―なんだよ……早く家に帰って、野球したいんだけどな……
そう思った僕だけど、その寄った場所のおかげで、野球の事はしばらく忘れることになった。

「わあぁお……!」
僕は思わずそう呟いた。場所はオネット市立図書館のそばの林。
森のように入り組んではいなかったけど、沢山の木の奥に古びた小屋があった。
僕はそこに連れてこられたんだ。小屋には僕らの他にも二人友達がいた。
「ねぇ、ここ一体どうしたの?」
僕がそう尋ねると、すでに小屋にいたティムが一気に説明してくれた。
「もちろん昔は誰か住んでいたみたいだけど、でも何年も誰も住んでないんだって。
普通こうやって勝手に人ん家に入ったら、ふほーしんにゅうとかになるみたいだけど、
今は誰の家でもないらしいし、別に売りに出されているわけでもないし、
変にいじったりしなければ、入っても大丈夫ってトーチャンが言っていたんだ。」
―そういえばティムのお父さんは、不動産かなんかやっていたっけな。
そんなことを思い出していると、今度はケビンが説明してくれた。
「そんな訳だからさ。俺達の秘密基地にしようと思うんだ!!! カッコいいだろ?
他の奴には内緒だぜ。特に大人にはな! ま、ティムの親父さんはしょうがないけど。」
―ひ、秘密基地……!!
ケビンのその一言に、僕は一気に興奮した。
自分の秘密基地で悪者をやっつける作戦を考える。
そんな映画のシーンから、ずっと秘密基地にあこがれていたんだ!
「はは、いいね! ナイスアイディア! はぁ~僕らにもついに秘密基地が……かぁ。」
僕が幸せに浸っていると、ケビンが補足をする。
「ネスの他にもポーキーにも教えてやろうと思っていたけど。あいつの事だからなぁ……
きっとすぐに誰かにばらしそうだし。親父さんに話して、何かしてきそうだからな。」
彼がそういうと、他の二人もうんうんと頷く。……僕もそう思う。ポーキーには悪いけど。

そんな訳で、秘密基地をゲットした僕らは、明日は本や食べ物を持ってこようと決めて解散した。
僕は帰り道、ずっと口元が緩みっぱなしだった。本当に、本当に嬉しい。
僕ら子供達だけの場所。それってなんだか素敵だろう?
―ああ、そうだ。 僕はふとあることを思い出す。オネットの西端のくちばし岬。確かそこに別荘が売り出されていた。
値段は7500ドル。もちろん子供の僕には、とても手も足も出ないけど……
もう少し大人になって、バイトをしたり、本格的に仕事をしたら、そんなに苦労はしないんじゃないかな?
そうさ! 大人になったら、今度は僕だけの秘密基地を持つんだ。
誰にも邪魔されず、自由気ままに過ごすことが出来るんだ。
それだけじゃない。友達を沢山呼んで、パーティーとかいつだって出来る。
もし恋人が出来たら、二人でのんびり過ごす。くちばし岬は眺めがいいから、ロマンチックなもんだ。
そんなことを考えているうちに、もうひとつあることを思い出す。
―やばいっ! 今日は皆で野球をするんだった!
野球チームにおいて、遅刻は厳禁!! プロの選手だって、絶対に遅刻はしないんだよ。
いつか僕だけの秘密基地を持つことをしっかりと胸に刻み、家へとダッシュで帰った。

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