君のチカラで!

ものがたり

男のロマンなんです

ドラゴンを倒し、地下大河を抜けると見知らぬ場所だった。すると男の子達は…?

川を泳いでいた小魚君の目の前に変な物が降ってきた。
いつもだったら近くの木から落ちた枯れ葉だろうと無視するところだが、
その変な物体はなんと! 大好きなミミズ君だったのだ。
冷静になってみればそのミミズ君は、銀色に光る物に刺さっていて、その銀色の物には、
細い糸が結びついているのが見えたのかもしれないが、小魚君はまだ晩御飯がまだだったのである。
つまり腹ペコだったわけでありまして。
(こりゃぁ、きっと神様がくれたプレゼントに違いないぜ! いっただきまーす!)
―ぱくっ。


「やったぁ! へへ、釣れたぞ!!」
ロイドはそう言って満足そうに釣り糸の先の魚を見つめた。
「ちぇ、またロイドかぁ。僕はまだ釣れないし……」
一方ニンテンははぁと深い溜め息をついた。
「ごめん、ニンテン。魚取ってくれ。」
「はいはい。ったくもーミミズが付けられなくって、釣った魚も取れない君が順調に釣るなんて!」
「で、でも、こればかりは運としか言いようが……」
「もういいよーはぁ。今度は僕が釣ってやるぞ!」

そろそろ太陽が沈む夕暮れ。ニンテンとロイドは川で釣りをしていた。今夜の晩御飯のためだ。
いつもなら夕方になるといったん町へ戻りホテルに泊まるか、マジカントへ行き休んでくるのだが……
サンクスビギングへは遠く、次の新しい町イースターは後どのくらいの距離なのか分からない。
もしかしたらもうすぐ傍まで来ているかもしれないのだ。
そしてマジカントへは、先ほどアドベント砂漠の遺跡の入口から行ったばかりだった。
自分たちの力に自信を持てるようになっていた3人が地下大河のドラゴンを倒していたのもあるだろうが、
まさか出口へ来てみれば夕方になっていたとは。しかも出る場所が変わっていて、見知らぬ場所だ。
「もう一度マジカントへ戻りましょう。」
というアナの意見をよそに、ニンテンとロイドの二人組は、
「たまにはキャンプをしようよ!」
「いいね~! 近くに川があったら釣りがしたいな。」
そう言って意気投合し、騒ぎ始めた。もちろんアナは猛反対である。
「でも一応砂漠の近くなのよ!? どんな敵が出るかどうかまだ分からないのに! また宇宙人たちが……!」
アナは純粋に砂漠の強敵や新手が心配だったのだが、ニンテンは能天気に、
「だーいじょうぶだよっ、アナ! 寝ているときは交代で見張ればいいし。
なんたって僕たちは、ドラゴンだって倒したんだよ? 今度は簡単にはやれらないさ。
それに……せっかく買ったキャンプ道具を有効活用しないとねっ!」
そう言って、背中に担いでいた大きなリュックを下ろして、ガチャガチャと中身を出し始めた。
テントを組み立てる一式と、クルクルと小さく丸められた寝袋3つ。
ロイドも続いて背負っていたリュックを下ろして、中身を出し始めた。
「サンクスビギングに売っていた最新のキャンプ道具。高かったし、使わないと。」
こちらは鍋や缶詰……調理道具などの小物。二人の急な意見はこのキャンプ道具のせいらしい。
一通り出すと、2人でテントを組み立て始めた。すっかり盛り上がり、ここで野宿する気マンマンだ。
2人の目はキラキラと輝いている。ワクワクと擬音も聞こえそうなくらいの笑顔が溢れている。
(男の子ってこうなのよね。危険なのに、そんな事気にならないで自分が好きなことをやっちゃう。)
アナはふぅとため息をついたが、テント作りに奮闘している二人を見て、ふふっと微笑んだ。
「待って! 私も手伝う!」

アナは先ほどのやり取りを思い出しながら、薪を集めていた。
別にキャンプファイヤーをするわけではないし、料理するためだけなのでアナ一人で十分に集められた。
(私も正直楽しいかな。こういう事をする機会ってなかなか無いから……)
そう思いながら、集めた薪に火をつける。アナお得意のPSIの登場だ。
「PKファイヤー!」
マッチやライターなら大きな火になるまでに時間がかかるが、これならあっという間に火が広がる。
そしてキャンプ道具に入っていた缶詰やスープを準備をしはじめた。
敵を倒すためではなく、何か役立てるためのPSI。女の子として料理の準備をする。
3人の中で自分にしか出来ないと思うと、しっかりと役に立っているんだなとアナは嬉しくなった。
「ニンテン達まだかしら? お魚、たくさん釣れているといいけどな。」

「まさか1匹も釣れないとは……とほほ。」
パチパチと音を立てて燃える薪の周りに刺さり、いい具合に焼けてきた魚を見つめてニンテンはそう呟いた。
結局ニンテンは魚を釣り上げる事が出来ず、今目の前にある魚は皆ロイドが釣った物だ。
「まぁ運だよ、運! 今日はたまたま僕の運が良かっただけだよ。」
大漁だったロイドはすっかり上機嫌。その様子を見てニンテンはガックリ肩を下げた。そんな彼を何とか励ますアナ。
「そう気を落とさないで、ニンテン! あ、2人ともスープが出来たわ。はい。」
さすがに砂漠の近くだけあって、日が沈んで星も見えてきたこの時間は冷える。
3人は出来たてのスープを飲み、体を温めた。まさに体の芯から温まってくるようだ。。
そして焼けた魚を頬張る。塩焼きというシンプルな味付けでも今の3人にとっては十分だ。
「たまにはこういうのもいいよね。なんていうかな……冒険しているんだなって思うよ。」
「うん。それにスープも塩焼きもいつも食べているのと違う気がする。」
魚もスープもペロリと平らげたニンテンとロイドは満足そうにそう言った。
「皆で協力して作ったから……この料理はきっと腕のいいシェフ作った料理よりも勝るんだわ。」
アナのその言葉に、ニンテンとロイドは照れた表情を見せた。アナ自身も少し頬を染めて微笑む。

食事を終え、星を眺めながらロイドによる宇宙の講座があったり、自分自身について話題に花を咲かせた。
会話は交わすことはあっても、それぞれ出会う前の自分たちのことはあまり話した事が無かった。
今まで知らなかった仲間の一面。こうして楽しい時間は過ぎていったのであった。

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